地球を尺度に生きる人へのバイブル『国境のない生き方』《読書感想》

エンタメ-読書体験

漫画家・随筆家で活躍するヤマザキマリさんの『国境のない生き方 私をつくった本と旅』を読みました。

どこまでも素直に行動し続ける彼女の姿。そこには「母の影響」「数多くの困難」を乗り越えてきたからこその強さがありました。

果てしなく世界を歩き回る「流浪の民」のように僕はなりたい。読み終わった時にそっと背中を押してもらえたような気がします。

「失敗」は怖くない。一度きりの人生に「経験」を重ねていくことだから。

【自由に生きる】母からの影響

筆者の母はオーケストラのヴィオラ奏者。周りの反対を押し切って身一つで子どもを連れて北海道札幌市に向かい、札幌交響楽団に所属したという行動力あふれる人です。

そんな母の背中を見て育った筆者。14歳で欧州へたった一人で旅をし、17歳になるとイタリアへ絵画留学に向かいます。

世間では「子どもは親の影響を強く受けて育つ」といいます。まあ当たり前といえばそうですよね。まだまだ頭の柔らかい幼少期に気が遠くなるほどの記憶が刷り込まれる。良くも悪くも絶大な影響を受ける。これは動物の摂理かもしれません。

「良くも悪くも」といいました。作品を読みながら僕の脳には「消化しきれないもの」がありました。それは僕が両親からの影響を受けることを拒んできたからでしょうか。

抵抗する反骨心から遠くへ飛び立つ。自分の足で歩き出す。そう信じきっていた僕にはヤマザキマリさんの言葉が新鮮に映ったのです。

母が、愛車のクラウンを買ってきた時のことを、今でもよく覚えています。妹と私が拾ってきた犬を乗せたら、ガソリンを満タンにして、すぐに出発です。一緒に旅をしていると、感激屋の母は私たちに向かって、いちいちこう言うのです。

「見てごらん、この景色。涙が出てくるでしょう」

そう言って本当に目をうるませている母を、子ども心に「かわいいなあ」と思って見ていたのですが、今思うとあれは本当に素晴らしい教育でした。

引用:国境のない生き方: 私をつくった本と旅 (小学館新書) P28

かさぶたを重ねるように経験を重ねる

筆者は17歳でイタリアへ絵画留学に向かいます。それから10年間を共に過ごしたイタリア人の彼とうまくいかなくなり、生活は極貧状態。詳しくは本書を読んで欲しいけれど、まさに人生のどん底だったようです。

デルスを産んだのは一九九四年、私が二七歳のときでした。

(中略)ひとつでも耐えられないような試練が山のように重なって、当時の私は人生のどん底にいました。あの時くらい、人間が嫌いになったことはなかったと思います。

引用:国境のない生き方: 私をつくった本と旅 (小学館新書) P136

死を意識するような失意の底にいた筆者。ここで僕が心から「すごい」と声をあげたくなったのが筆者の気迫あふれる決意の姿です。無力の中から自分の個性を糧に道を切り開いていく力。現実を天命として受け入れた上で自分らしく前に進むバイタリティー。

普通の人間ならこんなことはできないでしょう。必死に仕事を探して受け入れがたい状況も自分の身を守るために仕方がなく受け入れるのが精一杯。それが悪いわけでもダメなわけでもない。

だからこそ僕はヤマザキマリさんの姿がカッコいいと思った。筆者は10年間イタリアで学んできた絵画を漫画に生かそうとします。漫画コンテストの入賞賞金十万円で飛行機のチケットを手に入れてイタリアから子どもを連れて日本に帰国します。

自分の力を信じられる人ってどこか飄々としています。人の価値観をすぐに否定したりしない器の大きさがあります。何かトラブルがあったときに「なんとかなる」って受け止められるし、受け止めるための努力もこなせる。

読み進めていく中で、高揚のようなものが沸き立つと同時に、自身の無力さがゾクゾクと降りてくる感覚がありました。

人間ってすごい。人間を信じられるから欲求のままに新しい場所に向かいたい。心からそう思ったのです。

人間社会で生きていくというのは、つくづく大変なことです。

引用:国境のない生き方: 私をつくった本と旅 (小学館新書) P142

これほど日々背中に重く感じるセリフを、こんなに自然に言ってしまう。すごい。

まとめ

今回は、ヤマザキマリさんの『国境のない生き方』を紹介しました。

僕は恥ずかしながらこの作品でヤマザキさんのことを知ることになりました。作品の中にもありますが『テルマエ・ロマエ』『スティーブ・ジョブズ』などヒット作を多く発表されています。

漫画作品を読んだ後にこの『国境のない生き方』に入っていくのもとても興味深いものがあると思います。僕はこれからテルマエ・ロマエを読んで新しい発見を見つけたい。

作品中では多くの書籍が紹介されています。ヤマザキマリさんを知る一冊として多くの方に手にとっていただきたいと思います。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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